前回の五大陸交流祭にて、子供たちが着るTシャツを製作してくださった株式会社リアライズ代表佐藤さんにお話を伺いました。
Q 五大陸交流祭の活動を知ったきっかけはなんでしたか。
A 知り合いの紹介です。
失礼かもしれないのですが、実は活動のことを良く知っていたというわけではないんです。いただいたご縁を大切にしようという気持ちがありました。
Q 普段からそういったものを大切にされているんですね
A そうですね。
僕は今年でちょうど40歳で「不惑」と言われる年齢になったんです。まだまだ惑いっぱなしですけどね(笑)。「五十にして天命を知る」っていう孔子の言葉がありますけど、50歳までに天命に近づけたらいいな、と思っています。それは30歳くらいからずっと思っていました。
Q それを探していらっしゃるんですね。
A もしかしたらもう会っているのかもしれないけど、自分ではわかっていません。
「天命」って、これだったら命をかけてもいいなって思えるようなものだと思うんです。
「これができたらお金も何いらない!」と思えるものといつか出会えたらいいなという気持ちは昔からありました。
自分の天命を見つけるために、とりあえず天命みたいなものを持っている人とお付き合いをしようという気持ちがあって、それで今回のご縁も大切にしようと思ったんです。
もちろん、会社を経営しているので、お金のことは考えますけど、個人としてはお金どうこうよりは、そういうことを見つけられたらいいなという思いがあるので、天命を持っているような方たちとのおつきあいっていうのは大事にしています。
五大陸の活動っていうのは、磯野さんの天命なんだろうなって思ったんです。
Q 私もずっと、自分にしかできないことを探していました。今の活動は神様からギフトをいただいてやらせてもらっていると思っています。
全部はできなくても、私はその土台作りをやるんだろうなって思っています。
A 実は昔、音楽活動をしていて、海外に行ったこともありました。
僕たちの音楽をダウンロードすると何%かが海外の支援に行くということもやっていました。これもすごく深い考えがあったわけじゃないんですけど、スーダンの紛争がすごい時で、南スーダンのラスフール地域ってところの活動している方と縁があって始めたんです。
あんまりダウンロードされないから、全然支援にならなかったんですけど(笑)
Q 素晴らしいですね。
A いえ、そういった活動を理解してやっている、というよりは自分自身が救いを求めて始めたようなところはあります。
昔、音楽活動をしていた時に、心が折れたことがあって…。
僕は大学も出てないし、就職もしたことないし、これからどうしようと思う瞬間があったんです。音楽しながら、それだけじゃ生きていけなくて、バイトしながら生活してたんですけど、自分が生きてることが誰の役にも立っていないような感覚に陥ってしまったことがありました。実際にはそんなことないんですけど、その時はそう思ってしまったんです。
そんな時にボランティアをすることに救いを求めたんですよね。
わかりやすく、「自分は人のためになっているらしい」と自分に思い込ませることで、
崩れそうな自分を支えたことがありました。
はじめは、書き損じのハガキを仕分けて郵便局に持っていく、ということをやりました。少しお金になるので、それで東南アジアの国に学校を作ったり、井戸を作ったりする活動を手伝っていました。
なんとなく仕分けてるだけなんだけど、この作業が「誰かの役に立っているらしい」っていうのが、自分が救われた気がしたんです。
チャイルドスポンサーという存在を知って、登録したのもその頃です。アフリカのスワジランドって国の男の子のスポンサーを続けています。当時は赤ちゃんだったけど、今はもう12歳の立派な少年です。年に二、三回手紙のやり取りをしています。
誰かのためになっているらしいっていうことで、自分が楽になったという経験が原点かもしれないですね。
Q そういったことは今のお仕事にも影響していますか。
A うちの会社は内職とか梱包とかあるんですけど、そういう仕事を就労支援施設に依頼していたり、NPOとかの活動に少し協力させていただいていることはあります。
いただいた縁に関しては、まずやってみるというのを自分の信条にしています。
基本的に自分はすごくラッキーで、「こういうグッズを作りたいな」って思うと、そういう会社をたまたま紹介されるようなことが多いんです。たまたまなことって必然性があると考えるようにしているので、いただいた縁は大切にしようと思っていますね。
Q 「会社としてできること」というのもあるわけですね
A 会社にしたきっかけというのも実はありまして…
会社は11年目になります。最初は自宅の一室で始めて、3年間個人事業としてやっていて、その後株式会社にしたんです。
きっかけは震災でした。
2011年は個人事業をやっていたんですけど、僕と家内と梱包を手伝ってくれる人が十数人という感じでした。自宅の一室で注文取りながらやっていて、忙しいけど、収入もそれなりに安定し、逆に仕事へのモチベーションが低くなっていた時あったんです。この仕事のやり方だったら、東京にいる必要もないから、静岡に帰ろうかなって思ってたんですよね、子供も生まれたし…。
そんな時に震災があって、ある知り合いから仕事の相談をされたんです。東北のある観光施設で、震災以降人が来なくなってしまったとのことでした。もし可能だったら、うちの仕事をそこの施設に振ってあげられないかというお話でした。
力になれたらと思って話を進めていたんですが、最終的には僕が個人事業だったので、うまくいかなかったんです。そこは半分くらい行政の絡んでいる施設だったので、個人事業の人とは一緒に仕事はできないということだったんですよね、それがすごく悔しくて…。
社会的に認められる立場にならないと、善意でやりたいと思うこともやらせてもらえないのか、思ったんです。それがきっかけで株式会社にしました。自分がやりたいと思ったこと、いつか天命に出会った時に、すぐにできるような環境を作っておきたいなという気持ちで株式会社にした、というのもあります。
人を雇うと、社員のことも考えて、頑張る理由がどんどん足されていって、どんどん重くなってる感じがしますけど、「苦しい」とか「大変だ」と思うことと向き合って、付き合っていくことが会社経営であり、人生なのかなと最近は思い始めていますね。だんだん開き直ってきてるのかも(笑)
Q 自分だけじゃなく、人の人生を背負うようになっていらっしゃるんですね。
A 今は会社をやっていますけど、バンドやめた時には何にもなくて、どうしようこれから…っていう時にチャイルドスポンサーを始めました。月に5000円なんですけど、自分がこの5000円を払えなくなって、スポンサーをやめちゃったらこの子は困るよな、っていうのが自分の中で頑張る原動力になったのは確かですね。
自分を支えてくれたと思っているので感謝しています。
それも勝手に自分が思い込んでるだけなんですけどね、そこに支えられている自分がいたのでとても感謝しています。
Q 夢とか仕事って自分のためでもあり、人のためでもあり、社会のためでもありますよね。
A 北海道でロケットを開発している社長さんの話が好きなんです。その人は宇宙に興味があったけど、「どうせ無理」っていつも言われていて、でもその人は自分の夢を叶えたんですよね。
「どうせ無理」って夢を諦めるようになっちゃうと、ある国では奪い合うになっちゃう。夢を追いかけるっていうのがあたり前にできる世界は本当に素晴らしい、世界をそんな風にしたいと、その人はおっしゃっています。
僕も本当にそう思うんです。
日本は生活するインフラが整っているからちょっと違うとは思いますが、自分が頑張って手に入れようという思いがなくなってしまったら、奪うしかなくなりますよね。
努力して何かをやろうっていう人がもっと溢れるようになったらいいなって思っています。
自分はまだ何をしたいか分かっていないけど、それでも何にもないところからいろんな努力をしたら、結婚して、子供も持てたし、会社を作って、従業員もいて、頑張っていられる環境を作ることができました。それはとてもよかったと思っています。自分に子供ができて、そんな風に思うようになったので、世界中の人たちが、「努力をすれば、いい環境を作ることができる」と、思えるような世界になったらいいなって思います。
チャイルドスポンサーをやった時はあくまで利己的でした。自分がそこに救われている感覚でした。でも子供を持ち親になった今はちょっと違います。
自分が生きたよりもいい世界を娘たちに渡したい。という思いがあります。
自分に子供が生まれたことがきっかけでしたが、今は地域活動とかを通じで、「この街のこどもたち」になっています。その枠は少しづつ広がってる気がしていて、「世界」まで行くかはまだわからないけど、先のことを考えるとワクワクしますね。
Q 前回の五大陸交流祭で作っていただいたTシャツは子供たちがタイに帰った後でも着てくれています。
A 海外で着てくれて嬉しいです!
Q お話を聞いて、暖かみをすごく感じました。前回の交流祭ではTシャツの追加分まで全て送ってくださって、暖かい気持ちの流れというの感じました。
A いいご縁をいただいたと思っています。
活動を理解して、というよりは目の前に来たご縁をつかんだような感覚でいます。
自分はこんな仕事をしているので、作ることが苦でもないし、そんな軽い気持ちで申し訳ないくらいです。
僕の知り合いが使っている言葉で好きなのがありまして…
それは「笑顔の範囲で」です。
笑顔でできる範囲で活動を続けていこう、という意味です。
気合いを入れすぎちゃうと、苦しくなってしまうこともあると思うので、これからも笑顔の範囲で協力していければいいなと思っています。
佐藤正裕
株式会社リアライズ 代表取締役
インタビュー:磯野共余
文責:AssistLab 福田かおり
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